食品製造ラインの生産性向上に有効な3つの手法とは?
代表的な取り組み例とともに解説

近年では、少子高齢化による労働力人口の減少を背景に、製造業における人手不足は深刻な課題となっています。また、国内・海外問わず人件費の高騰が進む中で、以前と同様の生産方法では利益を確保しにくい状況にあります。食品業界においても、製造現場の人手不足・人件費高騰の問題は深刻ではないでしょうか。
このような中で、人材確保と並行して進めなければならないのが工場の製造ラインの生産性向上です。本稿では、特に製造ラインの生産性向上を対象に、有効な3つの手法について紹介します。

※2022年9月時点の情報です

目次

1. 製造ライン生産性向上のための3つの視点

製造ライン生産性向上のための3つの視点

労働力の確保が難しい中、製造現場には少ない人的リソースで高い生産性を生み出すことが求められます。そのようななかで、製造ラインの生産性を高めることにはどのようなアプローチがあるのでしょうか。具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。

生産量の拡大

ひとつは、ライン製造設備の稼働状況の可視化や改善活動などにより、従来と同じ製造設備・人的リソースでも設備の稼働率を向上させるアプローチです。それにより生産性が向上し、需要増にも耐え、販売機会を逃がさない製造が可能となります。

コスト削減

もうひとつは、生産性向上のためにラインの自動化やデジタル化などにより、従来より少ない作業者で製造ラインの稼働を可能とするアプローチです。人件費削減はもちろん、人手不足を解消するための施策としても有効です。

品質安定化

最後に、生産性向上のために作業の見直し・マニュアル化を進めるアプローチです。人的ミスの削減や生産する製品の品質安定化に寄与します。
このように、製造ラインの効率化にはさまざまなメリットがあります。それでは、製造ラインの生産性を向上するためには具体的にどのような方法が有効なのでしょうか。以下では、3つの取り組み例を紹介します。

2. 製造ライン生産性向上の取り組み例1 AIによる異常行動検知の自動化

まず初めに、製造ライン生産性向上の取り組み例として「AIによる異常行動の検知」について紹介します。近年では画像認識技術をはじめとしたAIの性能向上もあり、工場におけるAI活用の領域が広がっています。AIを活用することで、作業者が行う作業にムダ・ムリ・ムラがないかという業務効率の観点に加え、作業ミスや内部不正などの問題行動の検知も可能です。
「AIによる異常行動の検知」の具体的な流れは以下の通りです。まず、工場内にカメラを設置します。作業者が行う作業をカメラで撮影の上、AIの画像解析により分析。立ち位置や作業姿勢、移動範囲や速度などから、不自然な状態や逸脱行動などの異常を検知できるようにします。
異常を検知した場合には、事前に設定したルールに従って即時発報を行うこともできます。これにより、品質事故や内部不正の未然防止につながります。また、作業者のエラー行動を早期に発見し、改善につなげるような利用方法も可能です。
さらに、カメラ映像は食品業界において重要であるトレーサビリティへの活用や、業務改善へのインプット情報としても有効に利用することができます。

3. 製造ライン生産性向上の取り組み例2 点検・報告業務のデジタル化

次に、点検・報告業務をデジタル化する方法として、タブレットの活用について紹介します。
従来、工場における点検業務は大まかに「チェックシートや手順書の印刷・準備」「現場での点検作業」「オフィスに戻っての報告書作成」というフローで行う必要がありました。点検業務のボリュームにもよりますが、これらの業務は作業者にとって大きな負荷となります。例えば、チェックシートや手順書の印刷一つとっても、かなりの時間が必要です。
点検業務にタブレットを導入することで、これらのフローを大幅に省略することができます。チェックシート・手順書の印刷は不要となり、現場の点検作業においてもタブレットに点検結果を入力する運用が可能です。入力された点検結果をもとに、自動でそのまま報告書の下書きを作成するような仕組みも構築できます。また、点検対象となる機器・設備の写真撮影などもタブレットで実施することで、報告書に自動的に写真を添付することもできるでしょう。これらの取り組みにより、点検業務に付随して必要であった一連の作業を削減することができます。

スマートグラスの併用も

さらに、タブレットに加えてスマートグラスの併用も効果的です。スマートグラスとは眼鏡型のウェアラブル端末であり、眼鏡のグラス部分がディスプレイとなっており、さまざまな情報を表示できるものです。特に作業に両手が必要となる場合は、点検時に作業マニュアルを参照するのも一苦労です。スマートグラスを利用することで、効率的にマニュアルを参照することができます。
また、スマートグラスには一般的にはスピーカーも備わっているため、遠隔での作業指示も行いやすくなります。特に非熟練者に対しては熟練者が付き添って点検作業を実施することも多いですが、スマートグラスを利用することで熟練者が遠隔から指示を行うように業務を変更することも検討できます。

4. 製造ライン生産性向上の取り組み例3 工場内の可視化

最後に、工場内を可視化する手法として工場内の混雑分析について紹介します。
工場内は、様々な要因でヒトやモノの滞留が発生することがあります。典型的な例がエレベーターです。需要量に対してエレベーターの運搬能力が低いと、エレベーターで待ち時間が発生し、効率的な業務の妨げとなり生産性の低下につながります。エレベーターは時間帯や日程などによって需要が変化するため、滞留発生の原因分析も必要となります。そこで、工場内でどのような形で滞留が発生しているのか、混雑分析を行うことが有効となります。

具体的な流れは以下の通りです。まず、工場内で滞留が発生していると思われる箇所にカメラを設置します。これにより、ヒトやモノの流れを可視化。カメラ映像をAIにより分析することで、滞留の発生地点や発生時刻、発生要因などを把握することができます。
工場内のどの地点でどのような要因により滞留が発生しているのかを突き止めたら、導線の改善や設備の増強など、滞留を解消するための対策につなげることができるでしょう。

その他、製造設備の稼働状況の可視化などの取り組みは下記コラムでも紹介しています。

5. まとめ

本稿では、製造ラインの生産性向上において有効な3つの手法について紹介しました。工場現場における人手不足問題の解決糸口が見えない中では、業務効率化により人手不足を和らげる方法が有効です。

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