工場運営で重要視すべきステークホルダーとの関係性
有効な施策の事例を紹介

工場は企業の収益を生み出す生産拠点です。一方で、工場が立地する地域や住民にとっては雇用や誇りを生み出す重要な接点でもあります。そのような特徴を持つ工場を運営していく上では、地域や従業員などのステークホルダーとの関係構築が重要です。ステークホルダーと良い関係性を維持できれば、自治体との連携や、従業員のロイヤリティ向上などのメリットを得られますが、関係が悪化すれば運営上のリスクともなりかねません。
この記事では、経営層、経営企画、広報・ブランディング、工場運営部門の皆さまに向けて、工場におけるステークホルダーとの関係性の重要性に加え、より良い関係構築を目的とした施策の事例について紹介します。

※2022年11月時点の情報です

目次

1. 工場においてステークホルダーとの関係性が重要な理由

工場を取り巻く環境とは

工場などの企業の拠点は町の産業の象徴といえます。評判の良い工場が地元にあれば自治体や近隣住民は好感や誇りを持ちますし、その反対であれば工場運営に支障が生じることもあります。
工場の生産品目にもよるものの、工場は生活環境を悪化させるリスクがある施設と認識されてしまうおそれもあります。一方で、地域社会や学校とうまく連携できれば、地域貢献を通した親近感の醸成やファン育成などの効果を得られるでしょう。
このように、工場とステークホルダーとの関係性は切っても切り離せないものであり、工場を運営していくためには、ステークホルダーの理解を得る取り組みが重要といえます。

工場におけるステークホルダーとは

工場におけるステークホルダーとは誰なのでしょうか。具体的には以下の通りです。

地域社会

地域の産業拠点といえる工場は、自治体や学校、近隣住民などがステークホルダーとなると考えられます。地域社会の理解を得ることで、工場の運営を円滑なものにできるでしょう。

取引先

自社の取引先も、重要なステークホルダーといえます。取引先に対して、どのような製品をどのようなプロセスで生産しているのか、安心して取引できる工場なのか、どのようなパーパス(理念や存在意義)に基づき運営をしているのかを伝えることは重要です。

従業員

従業員も大切なステークホルダーです。誇りを持って働ける工場であることは、労働意欲や生産性の向上の面でも重要といえます。さらに、工場の従業員は地域の生活者でもあることも意識すべきでしょう。

3つのステークホルダーが工場に対して持つ想いを3つの軸で整理した図



ステークホルダーとの関係性悪化によるリスク

ステークホルダーとの関係性悪化により、どのような事態が発生するのでしょうか。具体的には、以下のリスクが挙げられます。

ステークホルダーとの関係性悪化によるリスクイメージ

  • 地域住民との関係性悪化により、工場や製品の悪評、商品のブランド棄損、人材獲得難などに影響
  • 取引先への説明不足や透明性の確保不足により、取引停止、事業者責任の追及、生産停止などに影響
  • 従業員とのコミュニケーション不全により、不正リスク、情報漏洩リスク、人材獲得難などに影響

このような事態を避け、ステークホルダーとの関係性を維持していくためには、工場を「コミュニケーション拠点」としてとらえ、ステークホルダーに配慮したなコミュニケーション施策を実施していく必要があるでしょう。
それでは、コミュニケーション拠点として工場を活用するには、どのような試みが有効なのでしょうか。
以下では、3つの事例を通して有効な取り組みを紹介します。

2. 取り組み事例1:地域住民・生活者との良好な関係性づくり

事例概要

業種:飲料メーカー
所在地:国内
従業員数:約40,000名
ポイント:ビール醸造家の想いを伝えるファクトリーツアーを提供

※画像はイメージです

まず紹介するのが、工場見学(ファクトリーツアー)の実施です。ファクトリーツアーを実施することで、地域住民や学校などに対してオープンな工場のイメージを構築できます。
多くの企業で実施されているファクトリーツアーですが、例えばある飲料メーカーでは、ビール醸造家の想いやこだわりを伝えるファクトリーツアーを提供しています。同社では、目に見えない醸造家の想いやこだわりを伝えるべく、空間全体でブランドの世界観を体感できるコースを構築しました。

また同社以外の事例として、実際に足を運ぶ見学ツアーの実施に加えて、近年では「オンライン工場見学」や「マンガを活用した多様な層が親しみやすいコンテンツの提供」「メタバース活用による双方向コミュニケーション」「ゲーム要素を組み入れた体験機会の提供」など、多様な手法で情報を提供する事例も増えつつあります。

これらの手法により生活者をはじめとするステークホルダーとのタッチポイントを拡張することで、地域活性化やブランド体験価値向上に貢献できるでしょう。

3. 取り組み事例2:透明性の確保

事例概要

業種:総合化学メーカー
所在地:ドイツ
従業員数:約110,000名
ポイント:約45,000点の化学品の製造にかかるCO2排出量を測定の上、顧客へ公開

※画像はイメージです

工場から適切に情報を公開することは、企業の透明性確保の観点で重要といえます。工場の情報発信により、近隣住民や取引先からの信頼や安心感を得ることができるでしょう。
例えば、CO2排出量の公開も、透明性を確保するための手法の一つです。CO2排出量を算定するためのマネジメント体制や自社ガイドラインを構築の上、算定ツールを活用して排出量を定期的に算出し、結果を外部公開することで、自社のCO2削減の取り組みを可視化できます。
ドイツのある世界最大級の総合化学メーカーにおいては、約45,000点の化学品の製造にかかるCO2排出量を計測の上、ステークホルダーに開示しています。計測は調達・生産・物流などのバリューチェーン全体を通して実施。同社では、調達・生産・物流に至るまでのプロセスを早期に一貫してデジタル化したことにより、このような計測を実現できました。
工場の実態を可視化し、事業者の説明責任や透明性を維持することで、持続可能な工場の運営につながるでしょう。

4. 取り組み事例3:従業員のコミュニケーションの活性化

事例概要

業種:製造業(ゴム製品)
所在地:日本
従業員数:約15,000名
ポイント: タッチパネル型デジタルサイネージで効率的な情報共有を実現

※画像はイメージです

従業員は工場の重要なステークホルダーとして認識するべきです。上述の通り、自身が勤務する工場に対して誇りを持ってもらうことは、従業員満足度や生産性の観点から重要といえます。
従業員とのコミュニケーションを活性化する手法として検討できるのが、工場内での情報共有サイネージの設置です。特に工場においては、従業員が個別にPCを持たないケースが多く、社内イントラなどでの情報共有がしにくい環境にあるため、サイネージの活用が有効です。
ゴム製品を製造する製造業A社では、これまで印刷物を掲示することで伝達事項の連絡を行っていました。しかし、ペーパレス化や効率的な情報伝達の観点から、デジタルサイネージの導入を計画。インタラクティブ性のあるコンテンツの表示を念頭に、画面にタッチパネルによるボタンを設置し、利用者が見たいコンテンツを選択できるようにしました。これにより、知りたい情報を自身で選べるという、効率の良い情報伝達を実現しています。
従業員とのコミュニケーションを意識し、安心・安全な職場環境の構築によって、従業員一人ひとりが働きやすい環境を整えることができるでしょう。

さらに別の観点では、オンライン上で実施できるe-Sportsを活用した文体活動など、新たな文体活動のあり方にも注目が集まっています。コミュニケーション活性化のため、多様なコミュニケーションの場を提供することも検討してはいかがでしょうか。

5. まとめ

この記事では、工場におけるステークホルダーとのより良い関係性構築を目的とした施策の事例について紹介しました。当社では、DNPファクトリーDXとして、「ステークホルダーエンゲージメントの向上」領域で、「従業員とのつながり」「投資家とのつながり」「生活者とのつながり」についての製品・サービスを提供しています。詳細については、以下の資料にてご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

また、DNPでは「ファクトリーDX」をテーマに、工場DX推進担当者さまとともに課題をとらえ、施策の検討~PoC~導入までを伴走型で支援する下記サービスも提供しております。ご相談などお気軽にお問合わせください。

製造現場の「見える化」からはじめる、工場DX伴走支援サービス
あらゆるデジタル技術を活用した、持続可能な工場が求められています。
私たちは「リスクマネジメントの向上」「生産性の向上」「ステークホルダーエンゲージメントの向上」という3つの提供価値を通じて、工場のDX推進を支援します。

未来のあたりまえをつくる。®