マンションインテリア動向調査レポート2023​

DNPでは、長年にわたりマンションのインテリアトレンド調査を行い、オリジナルブランド製品であるDNP内装用化粧シート「WSサフマーレ」やDNPフローリング用化粧シート「BE-F」等の開発を行ってまいりました。 本コラムでは、2023年12月に開催されたセミナー「DNP Design Days 2023 WINTER」より抜粋したマンションインテリア動向レポートを、インテリアコーディネーターや建築設計デザインに関わるみなさまに向けてご紹介いたします。

本コラムは、壁材・床材など住空間向け製品を扱っているDNP生活空間事業部が編集しています。以下のバナーより、過去のインテリアトレンド調査結果を始めとした生活空間事業部が取り組むデザイントピックスをご覧いただけます。​

モデルルーム調査から見られるマンションインテリア変遷

DNPでは、内装用化粧シートの意匠開発を目的としたマンションモデルルーム調査を、1996年から28年間にわたり実施してきました。全国主要都市のモデルルームにおける建具やフローリング材製品の使用事例を調査する中で見られたトピックスを挙げてみることで、2000年頃から現在に至るまでのマンション建具や床の表面化粧材の歴史を顧みることができます。

インテリアのナチュラル・モダン指向により、建具の木目がオーク材から散孔材(チェリー・メイプルなど)へ変化

ミラノサローネなどイタリアのデザインが注目され、海外家具トレンドが影響力を持つようになり、単色の鏡面メラミン化粧板が人気に

建具面材にホワイト系・ディープ系素材が登場し、ホテルのような非日常的インテリアがトレンドに

ナチュラルグレー系木目が登場し、心地よい穏やかなインテリアが見直されるように

リビングにおける床材にシートフロアが採用されはじめ、メンテナンスフリーや耐久性が注目されるように

東日本大震災を経て生活者の安全・健康志向が高まった影響から、肌ざわりの良いドライな素材感が求められるように

DIYなど自分の手でつくる感覚や指向の高まりにつれ、ライフスタイルに合わせて住宅インテリアが個性化する傾向が見られるように

北欧テイストのインテリアが人気となり、家族や仲間とのつながりを強く意識した空間づくりに関心が集まるように

在宅勤務を始めとするテレワークなど、新しい生活様式に対応した間取り、インテリア空間が出現

マンションモデルルーム調査2023(関東・首都圏)

調査概要

2023年の関東・首都圏調査においても例年の調査同様、対象物件を都心部・都心周辺・郊外部の3エリアに大きく分け、デベロッパーや地域の偏りがないようにランダムに20物件25モデルを選定し、実地調査を行いました。

調査期間:2023年9月~11月
対象エリア:首都圏(都心部、都心近郊、郊外部)
調査物件数:首都圏20物件25モデル

調査結果

1. 2023年のマンションインテリアカラー傾向

2023年のリビングルームを中心とした建具と床のカラーの組み合わせは、数年前と比較すると、明らかに彩度が落ち、木目の色や単色は穏やかで、あたたか味のあるエレガントな印象へと変化しています。 (2021年調査結果の詳細はこちらもご参考ください)
昨今のインテリアの木目は、クールグレーからシフトしてきた「グレージュ」と呼ばれるウォームグレー系のカラーが中心になっています。この「グレージュ」は、建具だけでなく床材・壁紙・ファブリックなどインテリア素材の多岐にわたる領域でスタンダードなカラーになっています。

2017-2018年

2022-2023年

インテリア空間においてボリュームをなしている色味としては、グレージュを中心とした全体的なグレー基調の中で、「①シンプルなイメージのオフホワイト系」「②健康的で自然なぬくもりが感じられるペール・ライト系」「③デザイン性とセンスの良さが感じられるグレー・ディープ系」の3方向に集約されつつあると私たちは分析しています。

2. 経年で見るインテリアカラーの変化

さらに長期的に見てみると、マンションモデルルームに使用されている建具、床のカラーの変化を顕著に見ることができます。下のグラフは、2009年から2023年のモデルルームにおける建具と床材のカラーの出現率を表したものです。2013年頃までは建具、床材ともにディープからホワイトまでまんべんなく出現しています。これは販売エリアや価格帯、単身者かファミリーかといった住む人の属性等によってインテリアテイストに明らかな違いがあったためです。2015年頃からグレーの比率が大きくなり、23年には50%を超えています。マンションインテリアのカラーが、物件の特性に関わらず全般的に低彩度なグレイッシュカラーに偏っていることが分かります。

モデルルームにおける内装材(木目)カラー出現率の変化

*木目の色を濃い方から「ディープ」「ダーク」「ミディアム」「ライト」「ペール」「ホワイト」「グレー」「その他」の8種に分類しています。建具においては「ホワイト単色」を加え、計9種の分類としています。
*各グラフは小数点以下の端数処理により、合計が100%とならない場合があります。

3. 非木質素材のカラー傾向

木目柄以外の表面デザインでは、これまでは白を中心とした単色が一般的でした。白一辺倒であった壁紙がライトグレーに変化していく中で、インテリア全般にグレー色が浸透していった背景もあり、ファブリック素材や内装部材を中心に白だけでなくライトグレー素材はもちろんのこと、さらに濃いグレー素材も出現しています。

また単色やテクスチャーの素材もホワイトやブラックだけでなく微妙なグレーのニュアンスをもつ、奥行きのあるものが近畿圏でも多く出現しており、単なる白系単色の枠を超えた、新しい建具の表面デザインの世界を確立しつつあります。

4. DNPブランド製品における出荷ランキング

これまで述べてきたインテリアカラーの傾向は、大手デベロッパー各社様が開発する新築マンションに多く採用されているDNPの内装用化粧シートシリーズである「WSサフマーレ 」や「EB-F 」の出荷量ランキングにおいても見て取ることができました。
マンションインテリアにおける木目の色柄の特徴は、生活者の価値観や志向を反映して、強く明確な個性ではなく、コーディネートしやすく誰にも受け入れられやすい、バランスのとれた素材が求められつつあるのではないでしょうか。

DNP内装用化粧シート「WSサフマーレ」出荷数量ランキング  2023年4月~2023年9月
※画像をクリックいただくと製品詳細をご覧いただけます。 ※赤文字の品番は2022年の新柄

1位:WS-5091E 2位:WS-5135E 3位:WS-5215E 4位:WS-5060E 5位:WS-5186E

6位:WS-5160E 7位:WS-5208E 8位:W-5115E 9位:WS-5197E 10位:WS-5214E

ウォームグレーをはじめとする柔らかなイメージの木目が、穏やかでセンスあるインテリアをつくり上げています。その傾向を反映するように、建具に用いられるWSサフマーレの出荷数量ランキングにおいては、近年定番化した品番も含めて、ウォームグレー系カラーの品番が多くランクインしています。

DNPフローリング用化粧シート「EB-F」出荷数量ランキング  2023年4月~2023年9月
※画像をクリックいただくと製品詳細をご覧いただけます。 ※赤文字の品番は2022年の新柄

1位:EBFW-1131 2位:EBFW-1242 3位:EBFW-1193 4位:EBFW-1216 5位:EBFW-1181

6位:EBFW-1199 7位:EBFW-1194 8位:EBFW-1177 9位:EBFW-1240 10位:EBFW-1197

フローリングに用いられるBE-Fの出荷数量ランキングでは、 WSサフマーレと比較して色やデザインにばらつきがあり、幅広いコーディネートに対応している様子が伺えます。建具とのコーディネートの際に床の方が明るいバランスになることを考慮されたような品番が多くランクインしており、空間の上質感や表情の変化を与えることのできる品番に人気が集まっています。

おわりに

ここ2~3年はマンションインテリアではインパクトを意識したデザインを取り入れようとする指向は少なくなっているように感じられ、一人ひとりの価値観に焦点を合わせた生活者視点での、暮らしやすさに軸を置いた空間デザインが展開されているようです。本コラムがインテリアデザインや空間開発に関わる方々の今後の企画・提案活動にお役立ていただけましたら幸いです。

ライター紹介

1983年DNPに入社し、住宅内装材やホテル内装材等の企画デザインを担当。1996年よりマンションモデルルームの内装調査を開始、建具・床材のデザイン開発とともに、長年にわたり各種セミナーにてトレンド情報の発信業務を担当。

  • 2023年12月時点の情報です。

このコラムで紹介した製品・サービス

関連製品・サービス

未来のあたりまえをつくる。®